HIPHOP

ANARCHYの唯一の弱点 『Loca feat.Awich』(The KINGレビュー)

ラッパーANARCHYとは

まずはANARCHYというラッパーを紹介したい。
というか文字でいくら説明するより、本人の画像を見ていただいた方がイメージしやすいと思う。
百聞は一見にしかず。

どうだろうか。

そうめっちゃ怖い。


一人で歩いている時にこんな人が向こうから近付いてきたら、目の前の店がPEACH JOHNだったとしても速攻で店内に入って逃げる

恥ずかしさよりも命が大事だ。
そう思ってしまう程、まず見た目が怖い。

ヤンキーとかヤクザとかそりゃ怖いが、ANARCHYは別次元の怖さを感じる。
本当にぶっ飛んだ奴の顔をしてる。

例えるなら、池袋ウエストゲートパークで窪塚洋介が演じた「キング」のイカれてる部分だけを抽出して坂口憲二のガタイを足した感じ。
例えになってないか。まぁいいや。

ANARCHYのオラオラなリリック


見た目の話ばっかりしてしまった。
次はANARCHYの内面=リリックについて見てみよう。

ぶっちゃけ僕はアルバム一枚しかきちんと聴いていないのだが、それだけでも恐ろしいリリックが沢山出てきたので紹介する。

俺は簡単に人を殴れる いい時だけルールの後ろに隠れるやつ大嫌い 
俺と口喧嘩はあり得ない リングの下まで追い込むからマジでな
そんなビビんなチャレンジャー「それじゃラッパーじゃねぇじゃん」じゃねぇじゃん?
もう怖くなって逃げ出すのも無しだよ 本当の俺を見せるチャンスくれてありがとう

Kill Me feat.般若

この曲に至ってはもうマジで怖い。
沢山のラッパーがオラオラして似た様な事を言っているが、僕は「あーイキってんなぁ」としか思ったことが無い。どんだけオラオラした言葉もイヤホン越しに聞くと正直リアリティが無い。

だがANARCHYパイセンのザラついたおどろおどろしい声だとイヤホン越しなのに怖い
調子こいてると本当にバットで突然殴られそうな気がする。

これがHIPHOP界隈の人が言う「リアル」という奴か。なるほど少しわかってきた。

人を不安にさせる声のアーティストってたまにいるんだよな。
THE BLUE HEATSのマーシー(ANARCHYは「チェインギャング」をカバーしてるよね。やはり共通点があるのか。)とか、後はこのアルバムにも客演で参加してるSEEDAの人を煽る声とか。

この曲は2019年発売ANARCHY「THE KNG」収録。CDの販売価格が13,000円と高値に設定した事も話題となった。ちなみにこのアルバムには、般若、MACCHO、SEEDAといった大物ラッパーを始め、BAD HOPのT-pablow、変態紳士クラブでお馴染みのWILYWNKAなど若手ラッパーも含めた豪華な客演陣も参加している。

Loca feat.Awich で見せるANARCHYの弱点


僕がこのアルバムの中で一番紹介したいのがこの曲。

Loca feat. Awich/ANARCHY


WHORU?でも共演してバズったAwichとのフューチャリングしたこの曲
MVは真ん中に壁を隔てて、
左側がANARCHYがアメリカンなストリップで遊んでいる場面、
右側がAwichでやたらとセクシーな服を着て家で待つという構図になっている。

真ん中に壁を隔てて両者を描くのは、エアロスミスとRUN DMCがコラボした「Walk This Way」(さんまのからくり御殿で有名なあの曲)を彷彿とさせる構図だ。
(こっちはリアルに隣同士のスタジオ部屋なので若干意味は違うが。)


ちなみにRUN DMCはHIPHOP業界でレジェンド的な扱いを受けている様だが、
僕は元々エアロスミスファンなのでオリジナルバージョンの好きだ。
というのも、原曲をRUN DMCの人達がカラオケみたいに歌っているだけなので面白く無い。
オリジナルのバースでもふんだんに入れてくれたらまだ面白いのになぁと思っている。
一応貼っておく。

ちょっと話が逸れたが、ANARCHYとAwichの話に戻そう。

まずはAwichサイドから物語は始まる。ドスの効いた声で「あなた何処で何をしてるの」と帰りを待つ彼女。
一方Anarchyはオラオラ系のホーミー達と、ドエロいストリッパーのパンツに札をねじ込んだりして楽しく過ごしている様が描かれる。

Awichは何時も外で遊びに出ていく彼氏を寂しく思っている女として描かれる。
「後で、後で掛け直す。言葉巧み押し通す。」といつもお決まりの言葉で誤魔化される。
「あなたがやる事、私がしたら嫌でしょ?」ともっともな正論を吐くAwich。

確かに。それはそうだ。
しかしここはオラオラしているのがカッコいいとされるHIPHOP界である。
そんな正論は通用せず、ANARCHYはまだ帰ろうとはしない。

そして最後のフック(サビの事)が終わる頃、事件が勃発する。

ANARCHYがいつも通り『始まりはテキーラ・・・』とフックを締めようとすると、


ドンガラガッシャーン!と遂に怒りが爆発したAwichがモップで真ん中の壁をぶち壊し、

『あ゛あ゛!?テキィーラァァ!!!???」

と鬼の形相でANARCHYを追い詰める。

咄嗟にANARCHYは『ウソウソウソォ!!!』と否定。

面白い・・・・!
あんなに怖い人でも彼女には弱いのかな・・・。
ANARCHYも人の子なんだなぁ。親近感湧いてきたわ。

更に続けて
「今から帰るよ・・・」
「怒らないでよ・・・」
「お前だけだよ・・・」
彼女に弁解するANARCHY。

そうですよね。
怒っている女にはとりあえずなだめる言葉を畳み掛けないとね・・・。




壁という物理的な物で隔たれて違う世界として描かれていた場面がAwichの怒りの一撃で繋がってしまう。



二つの隔たれた世界を繋げる視覚の効果としては効果的な手法は、「Walk This Way」のMVでエアロスミスとRUN DMCを隔てていた壁は、まさにロックとヒップホップを隔てる「ジャンル」という壁であり、その壁をぶち壊す事であの名曲が生まれた。

とでも書けばそれっぽいか。

ANARCHYとAwichのこの曲は、世界の境界線すら壊してしまう「怒った女の恐ろしさ」と「普段オラオラなANARCHYも人間らしいところあるんだなぁ」と僕に教えてくれた。

補足

ちなみにAwichは「エーウィッチ」と読むらしい。
ずっと「アウィーチ」って読んでたよ・・・・・

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ショーペン
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HIPHOPが嫌いだけど好きな元バンドマン。28歳。 Twitterをフォローして頂けると更新をお知らせいたします。 小鳥をクリックすると僕のTwitterアカウントに飛べます。         ↓↓↓↓↓

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