「あー5分で着くわ。一服しようぜ。」
4分前に聞いた言葉を頭の中で反芻する。
殆どの家の窓から明かりが消え、町全体が寝静まっているようだ。
弱々しく灯る電柱の光を目がけ、無数の虫が群がっている。
ーーー静寂
この町には僕と、光に吸い寄せられる虫けらしか居ないようだった。
いや、虫けらも僕も結局同じ存在なのかもしれない。
僕にも彼らにも価値なんて無いのだろう。
そんな事を考えていると、低いマフラーの音が曲がり角の向こうから聞こえた。
向かいの家のブロック塀を照らして曲がってきた白いセダンは僕の前に停まった。
運転手の顔を確認しようとしたが、運転席の窓にも濃いスモークが貼られており、人影も確認出来なかった。
少しの間、マフラーの音だけが僕と車の間に響いていた。
真っ黒なウインドウがゆっくりと下がり始めた。
それに連れて、車内に流れている音楽が漏れ出してくる。
”ドン!、ドドン!、ドドンドンドン!!”
「・・・むぅぁずはルィアルな奴等手叩けぇ”〜!!!」
「クラーック クラァーック クラッカッカ!」
えぇうるさ・・・
親出てきちゃうからやめてぇ・・・・
ドムドムしないでぇ・・・・
これこそ公開処刑やでぇ・・・・・・
なぜHIPHOPはヤンキー達に人気なのか
ではブログを始めまーす。
今回はなぜヤンキーや不良達アウトローにHIPHOPヘッズが多いのかを考えてみる。
「頭が悪そうな人達が好きそうな音楽」
とイメージで語られる事が多いHIPHOPだが、本当にそうなのだろうか?
・・・本当にそうなのである。
別に統計を取ったわけでも無いし、ヘッズ1人1人にインタビューしたわけでは無いが、他ジャンルのアーティストに比べ、ラッパー達のライブには悪そうな奴は大体友達っぽい人の割合が多い。
僕の周りに人々もどちらかと言えばヤンキーっぽいアウトロー気取りの人間にHIPHOPファンは多い。
サブカル系のメガネや、Twitterで知的っぽい事を呟こうと必死になっているような頭良さげなHIPHOPファンもいる事はいる。
だが、あくまでメインのファン層はアウトローっぽい人々である。
なーんでだろ?
HIPHOPは持たざる者にも夢を見せる
「HIPHOPは持たざる者の音楽」とよく言われている。
いわゆる
エリート(学歴、財力、経歴)ではなくても、
音楽の理論を知らなくても、
楽器ができなくても、
声と言葉だけで自分を表現できる。
表現して良い。という意味だ。
ラッパー達は口を揃えて言う。
「俺は何も持ってなかった。でもラップがあった。」
これは、何の才能も無く、何の努力もしてこなかったリスナーにとって、麻薬と言っても良い程の心地が良く、甘い言葉である。
今まで何もしてこなかった何も持っていない自分に対して余りにも気持ちが良い言葉なのだ。
「ありのままの君でいいんだよ」系のJ-POPの歌詞を嫌う癖に、結局同じような意味であるラッパー達の言葉にHIPHOPファンは賞賛を与える。
「俺はワルで勉強もスポーツも何もしてなかったけど、ラッパーの言葉聴くと救われるなぁ。彼らも何も無かったんだなぁ。」
と一種の安堵感を得る。
この現象は巷に溢れているハーレム系の漫画、異世界転生漫画、少女漫画とが引き起こす心の作用と共通している。
次で掘り下げていく。
HIPHOPと少女漫画、ハーレム漫画の共通点
少女漫画や恋愛漫画とラノベやアニメの展開で一番多いのはハーレム系だ。
平凡な主人公が何故かわからないが異様にモテてしまう。
というモテない奴の妄想を具現化したような物語が過去から現在に至るまで無数に存在する。
プッシュされているイケメン俳優と一押しの新人女優がカップルになる恋愛映画はいつの時代も変わらずに供給されている。
最近亡くなった三浦春馬の「恋空」もその一種だろう。
昔は理由がイマイチ分かっていなかったが、僕はあまり好きではなかった。
掘り下げて考えてみると、何がムカつくのかとHIPHOPの共通点を発見しこの記事を書くに至った。
・・・何がムカつくかというと、
「ありのままの自分のまま誰かに好かれようとしている」所である。
「ありのまま」というのは何の努力もしないという事である。
『何の努力もしないけど、なぜかモテる。』
『異世界に転生したら平凡だった自分が特別な存在になる』
など、共通するのは「何も努力をしないで良い目を見ようとしている」所だ。
『学校で目立たない私が学年1のイケメンになぜか好かれちゃった・・・!』
『異世界に行ったら現代の常識を知っているだけで、無双状態・・・!』
うるせぇ!!
なに何もしないで気持ち良い思いしようとしてんだ!!
せめて努力ぐらいはしろ!!
と僕は思う。
それを読んで「こんな自分でもいつか・・・・」と夢を持ったまま終わる人生なんて考えたくない。
あれは創作の物語であり、実際にそんな事は起こり得ない。
妄想だからいいだろ!という意見もわかる。
ただ僕はその他力本願極まりない姿勢が好きではない。
過去には僕も他力本願だった時期があった。
・・・原体験はいちご100%だ。
『高校入ったらなんか知らんがモテるのかもしれない・・・・!』
と淡い期待を抱いていた。
でも実際は自分が努力しないと彼女なんて出来なかったよ。悲しい。
ちなみに僕はいちご100%を読むために週刊少年ジャンプを買っていたよ。
でも周りには「ワンピースとNARUTO読みたいから」って嘘をついていたよ。
えへへ。
まとめ
〜ラッパーの言葉に安心するな〜
高学歴集団
さて、モテない人間ほど少女漫画やアニメが好きなように、何も持っていない者ほどHIPHOPが好きという事をツラツラと書いてきた。
ラッパーは夢を見せる職業だ。
彼らはHIPHOPは持たざる者の音楽という。
学歴も職歴も資格もお金もない人からしたら、その言葉は気持ちがいい。
そしてその甘い言葉は人を惑わす。
だがそれをそのまま受け取ってしまうと大変なことになる。
凡人は何もしなければ凡人のままであるということを忘れてはいけない。
凡人が非凡人に変わるためには”努力”が必要不可欠だ。
ラッパー達はみんな”ラップを習得する”という努力をしている。
その時点で持たざる者では無いぞ!!
聞いているだけのリスナーは持たざる者だね。
だって何もしていないんだから。
なんなら成功しているラッパーは高学歴が多い。
ZEEBRA、S-WORD、SEEDA、KREVA、宇多丸、Mummy-D、SKY-HI、VERBAL、KEN THE 390、Shingo02など。
「天は二物を与えず」は凡人の僻みだ。
何も持たざる凡人こそ、何かを得ようと努力しなければ何も変わらない。
何も努力しないで、何かを手に入れたら気持ちが良いものだ。
宝くじのように、努力せず買うだけで大金を手に入れられる。
その気持ちも分かる。分かるが、
”何も無い”ことは”何もないうち”に誇るものじゃない。
何かを手に入れた後で、やっと誇りにできるものだ。
「何も無かった。けどここまで成り上がった」
まで続けないと意味は無い。
いちご100%を見て妄想している小学生と同じだ。
ちなみに僕は西野つかさが好きだったよ。
可愛い。
番外編:貧乏だからラップは間違い?
コスト面で見ればラップを始めるのも、ギターを始めるのもドラムを始めるのもぶっちゃけ変わらない。
中古屋に行けばギターやベースなんて5000円もしない。ドラムなんかスティックさえあれば始められる。一本500円程度で買える。一番気軽に始められる。
そして今の時代、ネットにただで教えてくれる動画なんかいくらでも転がっている。
君の携帯料金は月いくらだ・・?
俺にはラップしかなかったんだ!
と雑草魂を無理矢理演出しなくてもいいよ・・・と思う。
ラップが好きだから始めたよ、って素直に言えばいいのに。
ちなみに「ギター始めるならそれなりに金出した方がいい」とか言う奴は高いのを売りたいだけの店員か、知ったかぶり野郎なので聞く耳持つ必要はない。
ギターの形で弦さえ張れていれば最初は問題ない。
なんでもとりあえず始めてさえしまえば、どうとでもなる。
やっていくうちに自分の好きな楽器がどんなものかを知っていけばいいのだ。
マイクとアンプを買ったほうが明らかにお金はかかる。
ラップという歌唱法は練習を積まなければサマにならない。
ハードルの高い歌唱法だと僕は思う。
練習した人と練習してない人では卓球部と帰宅部ぐらいレベルが違う。
カラオケでラップを披露してダダ滑っている人は今この瞬間に何人いるだろう。
カラオケのトイレで酔わしたねーちゃんとヤりたいね。
バイチャ。